物上代位と質権設定の違い
保険契約に担保として質権設定をすることにより、債権者(金融機関など)は保険金から優先的に弁済を受けること(優先弁済)ができます。
しかし、物上代位を利用すると、質権設定をすることなく債権者が優先弁済を受けることが可能となります。
物上代位とは、担保物権が損害を受けた場合、価値が変形した目的物に対しても担保物権としての効力が及び、優先弁済を受けられるという仕組みのことです。
たとえば、火災保険契約を結んでいる家屋に抵当権が設定されているとします。
その場合、債権者は家屋を売却して弁済を受ける権利を有しています。
しかし、火災により家屋が焼失した場合は物上代位が発生し、債権者は家屋の価値が変形したものとみなされる保険金によって、弁済を受ける権利を有することなります。
物上代位と質権設定の違いは、保険金を差押(さしおさえ)る必要があるかないか、という点です。
差押(さしおさえ)とは、債務者の財産を処分して債権者が弁済を受けるため、国が強制的に財産処分の権利を取得することです。
物上代位によって保険金による優先弁済を受ける場合、損害を被った直後、速やかに国の執行機関に保険金を差押(さしおさえ)てもらうことが必要です。
なぜ保険金を差し押さえる必要があるかというと、差押(さしおさえ)を実行しないと、保険金は保険契約者に支払われることになり、他の財産と一緒にされてしまうからです。
このように、物上代位と質権設定は同じような機能を有していますが、差し押さえの必要な物上代位は手続きに手間がかかります。
したがって、現在では質権設定や抵当権者特約を利用して優先弁済を受けることが、一般的となっています。